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女医の言葉に、私は大きく瞳を見開く。
一方、お父さんとお母さんと呼ばれた男女は嬉しそうに何度も頷いてみせる。
意識が戻られてって……私、ずっと意識がなかったってこと?
そう混乱する私を尻目に、私が回復した喜びを女医や看護師と分かち合う両親。
女医は混乱の最中に居る私の頭を撫でると、まるで小さい子にする様に、優しく語って聞かせる。
「貴方のご両親はね? 交通事故で貴方が意識を失ってから、この5年間ずっと、毎日貴方のお見舞いに来て、話し掛けていたのよ」
そう、それはきっと、さぞ有り難いことなのだろう。
だが、この二人が誰かすらわからない、ましてや両親と言われてもピンと来ない私にとっては余計混乱するだけなのである。
すると、そんな私の異変に気が付いたのか、恐る恐る両親と呼ばれている人達が話しかけてきた。
「ねぇ? 大丈夫? 痛いところはない?」
「……うん」
老女の質問に、しごく短い言葉で答える私。と、今度は男性の方が口を開いた。
「お前……お父さんとお母さんのことがわかるか?」
「いいえ? 失礼ですが、どなたですか?」
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