虚ろなうろ

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 私の言葉に、全身の力を失い、へなへなと崩れ落ちていく女性。  一方男性は、気丈にそんな女性を支えると、まるで彼自身に言い聞かせる様に 「だ、大丈夫だ! 一緒に居ればいつか思い出すさ! そうですよね、先生? 思い出なら、今からだって沢山作れるんだ!」  と、声をかけ続ける。  その言葉に、何故だかわからないが無性に悲しくなり、涙を流す私。  何故、私は何も覚えていないのだろう。何故、私は彼らを思い出せないのだろう。何故、私は両親を忘れてしまったのだろう。  後悔はしても尽きないけれど、何も出来ない私はただただ涙を流す。  思い出は今からだって作れるんだ――お父さんであるという男性は、確かにそう言った。  でも、私は知っている。  取り戻せない物もあるのだ、と。  五年前から今日この時まで、両親と過ごせなかった時間は絶対に戻ってこないのだ。  私は五年間の空白を胸に抱えたまま、これからの人生を歩んでいくしかないのだ、と。  その事実が辛く、重く、私の背に圧し掛かる。  だが、いくら後悔しても、私の空白の五年間と今までの思い出は、きっと戻ってくることはない。  私は空っぽの私を抱き締め、涙を流す両親の胸に身を預けたまま、ぼんやりとそんなことを考えていた。  この空っぽで真っ白になってしまった頭は、心は、何時か埋まる時が訪れるのだろうか。
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