もう天使ではいられない 3 乙女の祈り

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「今度の大家さんなあ、  ずっと前に子供さんを亡くされて   ずっと夫婦二人暮らしなんやて」 写真のお母ちゃんは「うんうん」 言いながら聞いてる感じ。 「入試の時も二人でついてきて  くれたんやで。せやせや、  葵ちゃんトコのお母さんと  お父さんは甥っ子ちゃんと  ディズニー行ってたけどな、ハハハ」 アパートのお姉さん達が お祝いにくれた腕時計をして お母ちゃんに見せた。 「エエ人に囲まれて上手いこと  やってきたし、またやっていくわ!  バイタリティー溢れる  泉州女やからな!」 って気合い入れたのに・・・ スマホを見てしもた。着信はない。 ・・・淋しい・・・ 世の中には私より悲しい思いを してる山ほどいるけど、 こんな日は家族と一緒にいたい ・・・淋しい・・・。 ピアノ事件の日から お父ちゃんとの連絡は途絶えた。 向こうも何にも言うてこんから こっちもせえへん・・・ 削除仕掛けたお父ちゃんの番号の名前は 『アホ』と書き換えた。 「ヤバイ、ヤバイ!泣きそうや、  お母ちゃん、テレビでも見よか?」 つい握ってたスマホから リモコンに換えたとき 『乙女の祈り』! ピアノの音が・・・ お母ちゃんの音符が流れて・・・ もうそれだけで スマホの着信画面の 『アホ』の番号が涙で霞んでた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加