白い薔薇

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薄暗い道になり、街灯も少なくなって来た。 冬の寒さで、口から出る白い息は、まるで煙草の煙の様だ。 彼女は立ち止まると門を開けて自宅へ入って行った。 俺は、骨折した右足を庇う様に進むと、彼女が入った家を見た。 デカい白い家! まるで城みたいだ! 白い薔薇園の様な家に驚いた。 金持ちのお嬢様なのか? 門に手を掛けると………空いた。 入りたいが、不法侵入になってしまう……。 迷ったが、部屋のレース越しに、彼女が着替えているのが遠くに見えた。 少しだけ………。 そう思い、静かに門から中に入り玄関脇の白い薔薇の庭を通り、彼女の居る部屋へ向かった。 俺は下心に負けたのだ。 最低だな……。 右足を庇って、歩き難い薔薇の植わった庭を渡った。 ドサッ 「いっ……!」 まだ完治してない右足に痛みが走った。 何かに躓き、俺は転んだのだ。 ………? なんだ?これは? 俺は、躓いた物は石かと思ったが目を凝らして見た。 落ちた白い薔薇か……? いや……骨だ!! 犬でも飼っているのだろうか? よく、犬が噛んでる『食べる骨』だと思った……。 「キミ、そこで何してるの?」 「うわー!!」 彼女が白いガウンを着て、目の前に立って居たから驚いて大声上げちまった! 「ああ……。これ?」 彼女は天使とは一変、冷たい視線を薔薇の根元から出ている白い物体へ向け 「うちの旦那」 と言った。 「え……?!だ、旦那……?」 「旦那の骨! 綺麗な薔薇が育つ様に、肥料にしてあげたの!」 彼女の笑いながら答える声と同時に、右足のアキレス腱に激痛が走った! あまりの痛さに声が出ないとは、こう言う事なのか?! 俺は足首を抱え、のたうち回った。 ドクドクと溢れ流れ出ている、この感触は俺の血か? が………。 次の冷たい痛みで、俺は永遠に意識を失った………。 最期に見た彼女は微笑みながらメスを 俺の首、目掛けて引いた姿だった。 俺は、彼女の旦那と同じ薔薇園の肥料土となった。
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