カラフル。

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彼女は俺の問いに、少し考えて言った。 「ー…今は紅葉が綺麗だから、とりあえずその紙を赤色に塗っちゃうかなあ」 ー…なんて、自由なんだろう。 俺なんて、売れる作品を書かないと、読者受けのいいものを書かないとと必死なのに。 彼女の描く絵はきっと自由で。 たとえ綺麗じゃなくても、それはたくさんの感情に彩られているんだろう。 「あーでも、お兄さんは青って感じかも」 「…青?」 「哀愁漂ってるというか、どこか寂しそうというか…。あ、お兄さんの海の絵とか見てみたいかも!」 ー…真っ白な紙。 別に、それを白のまま使おうとしなくていいんだ。 だって。 「ー…ありがとう」 「…へっ?」 俺は彼女にお礼を言うと、ベンチが立ち上がって駆け出した。 「あ、ちょっと…!」 ー…だって、真っ白には無限大の可能性が秘められているんだから。
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