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「あっ、それです!」
「そう、よかったね無事にあって」
「わざわざありがとうございます!」
彼女は腰を思い切り折ってお辞儀をした。
「別にいいよそんな」
俺は何かをしたわけじゃない。
たまたまこのベンチに座って、たまたま落ち葉の山を発見しただけだ。
ふと、彼女の持っている袋に入ったスケッチブックに目がいった。
「…君、美大生?」
「あ、はい!すぐそこの美大に通ってて」
そういえば、さっきの筆箱もよく画材屋さんで売っている筆箱だった。
「へぇ、いいね。青春って感じだ」
「お兄さんも、まだ若いですよね」
22歳。
この仕事を始めて五年目になるが、まだまだ若手の部類だ。
「俺は社会人だからね。少し君が眩しく見えるよ」
今、真っ白で何も持っていない俺とは違う。
この子はたくさんの色を持って、日々を過ごしているように感じた。
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