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桐葉涼音。
桐葉さんとは、四年生で初めて同じクラスになった。
あたしが木野で出席番号九番、桐葉さんは十番。出席番号が連番だから、四月の最初、出席番号順で並んだ席が前後になった。
あたしは赤色のランドセル。桐葉さんは水色のランドセル。
あたしは自分の赤いランドセルって嫌いだ。だって、古いもん。みんな、ピンクとか、オレンジとか、水色とか、すごくきれいな色を持っている。縁だけ違う色のオシャレなやつとか。赤なんて昔っぽい。あたしだって、赤が欲しかったわけじゃあないのに。
はい、これ。買っといたから。
お母さんが勝手に買ってきたやつだもん。
それから、桐葉さんは丁寧だ。丁寧で、器用だ。持ち物がきれいで、机の中もちゃんとしていて、気づいたらクシャクシャになったプリントが奥から出てくるあたしとは、大違い。ランドセルだって傷一つついていなくて、ちょっと固そう。あたしのなんてベコベコなのに。
字もきれいだ。ノートがきれい。漢字練習帳なんて、三沢先生によくほめられている。花丸がたくさんだ。あたしはただの二重丸。
きっちりしていて、すごく賢い。計算練習はいっつも一番だし、テストも百点ばっかり。テストが返ってくるとき、クラスの子が桐葉さんに何点だった、ってきいている。だいたい百点で、クラスの男子が、あーまた負けたって、悔しそうに言っている。
桐葉さんは本当にすごいと思う。すごすぎて、なんなんだよって、嫌いになりそう。でも、嫌いじゃなかった。
桐葉さんは体育が苦手だ。走るのが遅いし、ドッチボールもすぐに当たっちゃう。そんなところもあるから、ああよかった、ってなんだかあたしは安心する。桐葉さんも人間なんだって、そんな風に感じる。おかしな感じだ。
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