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僕の家は父、母、妹、僕の四人だった。 少し前の地震の日、僕だけ部活の大会に行っていて大地震から免れた。 父、母、妹は家具の下敷きで亡くなっていた。 幸い祖父と祖母が引き取ってくれて、今は中学一年。 いい大学に行けるからという理由で私立の学校。 今日が念願の入学式。 家族を失ったこと以外は運がいいのかもしれない。 新しい制服に身を通し、ピシッとネクタイをする。 ネクタイはおじいちゃんに教わった。 「行ってきます」 「行ってらっしゃい。気を付けてね。」 自転車で坂を下り、桜が満開の学校の門を通る。 『東雲学院大學付属中学校』 それがこの学校の名前だ。 「...じゃあ皆さん入部届けを来週の月曜までに出して下さい。見学は一度行くように。」 「ねぇお前何部入る?」 「えー、楽そうなの」 ...楽な部活なんかあるわけないだろ。なんて言えるわけない。 知らない間にもうグループができていてひとりぼっちになってしまった。 みんな入部届けを書いていて見る限りあの部活に入る人は居ない。 ...学年で一人とかないよな。 「演劇部に入る新入生ー!居ないー?」 え? 「演劇部入部希望者ー!」 誰あれ。 上履きから察するに三年生の先輩だ。 演劇部なのか? 返事しなきゃ 「は、はい!演劇部入部希望です!」 「人多いからこっちおいで!」 「はい!」 「よし、演劇部入部希望だね?」 「はい。」 「入部希望者?私は副部長の加藤。演劇経験は?」 「ないです。」 「私キャストの伊織。演劇見たことはある?」 「あります。」 「何見たんだ?あ、俺二年のキャストの雅。」 「覚えてないです。ただ、とても心を動かされました。」 「おぉー!」 質問攻めと自己紹介攻めにあった。 人が少なくて廃部の危機だったそうだ。 この部活大丈夫かな。
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