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そこは純粋に驚いた。
「へぇ~。俺達って、つくづく心が通じあってるんだな~。これぞまさしく以心伝心」
しかし、よくよく考えればさほど奇遇な出来事でもない。
ここ最近残業続きだという加東と話す機会を設けるには会社付近で落ち合うしかなく、しかもなるべく人目を避けられそうな場所となると選択肢はかなり狭まって来る。
だから俺と佐藤のチョイスが被ったのも充分頷けることなのだが、あえてその解説はしてやらずに俺は挑発するようにそう言い放った。
「……自分で言うのもなんだけど、俺は恋のかけひきは結構得意な方だと思う」
しかしそれには反応せず、加東は話を展開させた。
「最初は興味を持たれていなかったけど、アプローチを繰り返して振り向かせた女性も過去に何人かいた」
「何ですかいきなり。自慢大会ですか?」
「そういった駆け引きには自信があった。佐藤さんにも、その時と同じ手応えを感じていた」
「はぁ~、色男は言うことが違いますね~」
「ぶっちゃけ、たとえ現段階でお前に惹かれていたとしても奪える自信は充分にあった。なのに数日後、あまりにもあっけなく振られて、あげくの果てに『加東さんとだけは付き合いたくない』なんて言われて。興味がないどころか何故か憎しみの対象に成り下がっていた。何がどうなってそうなったんだ?」
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