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夜中に横で寝息をたてる妻の顔を覗き込むようにして,妻と娘を殺して自分も死のうと本気で思った。そんな勇気はないくせに,妻と一緒に心中してやろうと何度も何度も頭の中で死ぬ方法を考えた。
薄明りで見る妻の顔は,付き合い始めたころよりも確実に齢を取っていたが,その美しさは増していた。この美しさを僕以外の誰かに触れられていると思うと,胸が張り裂けそうになり涙がこぼれた。
振るえる指で妻の髪を優しく梳かし,起こさないように気を付けながら何度も頭を撫でた。
妻の寝顔を見ているだけで涙が止まらず,なぜ僕と娘を裏切ったのか,どこの誰と会っているのか,こうやって平静を装って僕と枕を並べていられる妻の神経が信じられなかった。
苦しいほど妻を愛し,裏切られたことを受け入れられずにいる自分が情けなかった。
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