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仕事の合間に娘の写真を眺めては,休みが取れたらどこに連れて行ってあげようか,どんなところに行きたいのかと考えた。
娘が楽しそうに公園を走り回る姿を想像しながら,少しでも早く仕事を終わらせようとパソコンのモニタを見ながら書類の確認と修正を続けた。高い所が苦手な娘は,公園では遊具で遊ぶよりも広い芝生の上を駆け回るのが好きだった。
仕事に集中していると時間の感覚がなくなってゆくが,毎日,外が暗くなってから本格的に忙しくなった。そのため,ここ数日は娘より先に起きて家を出て,娘が寝てから帰宅する日が続いていた。妻に負担を掛けているのも感じていたが,どうしようもできなかった。
もともと仕事のできる妻だったが,結婚を機に妊活をするという理由で会社を辞めて家庭に入ってくれた。収入は共稼ぎだったころよりも遥かに減り,昔のような贅沢な外食やデートはできなくなったが,娘がいてくれればなにもいらなかった。
そんな娘の面倒をすべて妻にお願いしてしまっているストレスと,妻とも向き合って話していないことに申し訳ない気持ちがあった。とくに娘と一緒に遊べないストレスは僕にとっては,想像以上に大きかった。
いつも終わらない仕事に目途をつけて,キリのよいところで帰ることにした。毎回,少しでも早く帰宅しようと思っているのだが,時計を見るといつも二十二時を回っていた。
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