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「…………」
ガタンっと大きな音がして、そいつが床に倒れ込む。
「……か…加賀くん!?」
「加賀! どうした!?」
俺の目の前だけ、時間が止まったような気がした。
すべてのことがスローモーションで動いていく。
女史がソファから立ち上がる。
さっき紅茶を入れてくれた波崎というサークル部員が駆け寄り、そいつの名前を呼びながら抱き起こす。
腕の中で揺れる髪。
閉じられた瞼。
細い腕。
血の気を失い、青白く透き通って見える肌。
それは、俺の記憶の中の黒子ひとつない白い背中と重なった。
「ミズキ……」
絞り出すように、俺はそいつの名前を呼んだ。
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