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「正直におっしゃい。あんた達、知り合いなの?」
「……いいえ」
別に嘘はついてない。
「俺、あいつが加賀ミズキだっていうの、今はじめて知ったんですよ」
「はあ?」
さすがに女史は眉間にしわを寄せて俺を見上げた。
「なに意味不明なこと言ってんの。名前、教えたでしょ。来る前に」
「加賀、としか聞かされてません。それにイケメンとは教えてもらいましたが、写真も見てませんし」
そうだったっけと、女史は俺の目の前にそいつのプロフィールを掲げ上げて見せた。
加賀瑞希。
なるほど。こういう字を書いたんだ。
加賀瑞希。こいつがミズキ。
それは兄貴が唯一俺に譲らなかった宝物の名前。
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