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「ミズキ? 誰?」
聞いたことのない名前だった。ミズキ。誰だろう。兄貴の大学の友人か何かだろうか。
「そいつと何を約束したんだよ」
「そんなたいしたことじゃないよ。ただの口約束。しかももう半年も前だし、向こうは忘れてるかも」
半年?
なんだその長期戦の約束は。
「んなのわかんねーじゃん。連絡してみれば?」
俺の言葉に、兄貴は困ったように右側の眉だけ寄せて笑った。
「連絡手段がないんだよ。メールも電話番号も知らないし」
「はあ? なんだそれ。なんでそんな相手と約束なんかしたんだよ」
「だから、ただの口約束だって言っただろ。ちょっとした話の流れで、誕生日に逢いたいって言われただけだから」
「誕生日? それが今日ってこと?」
兄貴は困った顔のまま小さく頷いた。
「それってプレゼントくれよとか、そういう話?」
「ちょっと違うかな。ただ、逢ってほしいって」
「…………」
何故か胸の奥がチクリと疼いた。
「場所は? どこで会う約束だったんだ。いくらなんでも場所と時間くらいは決めたんだろ」
「時間の約束はしてない。まあ昼間はこっちも向こうも学校があるから、夕方以降のつもりではあったろうけど。あと、場所は俺が教育実習に行った高校の図書室」
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