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そういうことを考えれば、兄貴の約束をした相手がまさに今、忍び込む形で学校の図書室にいる可能性は充分にあるってことになる。とは言っても、もちろんそいつが半年も前の約束を覚えているほど律儀な奴だった場合はってことだけど。
「そいつ、本当に来てると思ってんの?」
「さあ、どうだろうね」
言いながら兄貴は少し笑った。なんだか来ていることを確信しているかのような表情に見えた。
「……だったら確かめに行けよ。俺のことは気にしなくていいから」
だからだろうか、気が付いたら俺はそんなことを口走っていた。
「どうせ寝てるだけなんだから、俺は一人で大丈夫。それに熱も下がってきたし」
確かにその時、俺の熱は下がり始めており、体調も回復に向かっていた。
「本当に……行ってもいいのか……?」
「いいよ。ってか、もしそいつが来てなかったら、兄貴は無駄足踏むことになるんだぞ。それでいいなら行ってこい」
「…………」
「ほら、行きたいんだろ。早く行けって」
「すまない。じゃあ、ちょっとだけ行ってくる」
「あ……でも、一個だけ」
さっきまでの態度はなんだったのかと思うほど、勢いよく部屋を飛び出しかけた兄貴の背中に向かって俺は声をあげた。
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