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「こら、健。そんなとこに隠れてないで出てきなさい」
「お一人でいらしてたんじゃないんですか?」
俺の背中に慌てた声が届く。焦っているのにやっぱり柔らかくて心地良い声だ。得な声だななんて思いながら、俺は置いてある大量の大道具小道具たちを気にしながら、応接セットの方へ戻ろうと足を進めた。
「いちおう挨拶だけさせようと思ってね。荷物持ち兼ボディガードとしてジョバンニ役の役者だけ連れてきたのよ」
「そうだったんですね。気が付かなくてすいません」
「別に気にしなくていいわよ。かくれんぼしてるのはあっちだから」
……おい。
言うに事欠いてかくれんぼってなんだよ。ガキじゃあるまいし。
ブツブツと声に出せない文句をたれながら俺がようやく書割を潜り抜けて顔を出すと、同じタイミングで未来の俺の相棒となる男も俺の方へと目を向けた。
「…………!?」
とたんに凍りついた。
世界が凍りついた。
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