同居生活

1/44
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ

同居生活

 そうして俺達の奇妙な共同生活が始まった。  俺達は朝一緒に朝食を食べ、一緒に劇団へ行き、夕方部屋に帰ると二人で夕食を取り、交代で風呂にはいる。夜は瑞希は自分のベッドで、俺はベッドの脇に布団を敷いて寝る。  文字通り、朝から晩まで夜中も含め二十四時間ずっと一緒。しかもその間、会話を途切れさせることが出来ないという縛りつきで、だ。  それというのも、代表はこの共同生活におけるこんなルールを五つ、俺達に指定してきていたのだ。  一、食事は一緒に取る  二、部屋では台本は開かない  三、沈黙は三〇分まで。常に会話をする事  四、嘘はつかない  五、ルールを破ったら一つ相手の望みを聞く  なんだ、このルール。と思ったりもしたが、代表からの命令に逆らえるわけもなく、瑞希はそれを何枚かコピーして壁に貼り付けた。違反しそうになった時、お互いトンっとその紙を叩いて警告を発するためだ。  まあ、警告とは言ってもそんなきつい印象のものではない。  たとえばあきらかに相手が嘘を言っている時にそれを指摘するのに使ったり、三〇分経ってもどちらも会話をしようとせず沈黙が続いた時に、いわゆる“何か話せよ”という無言の圧力の代わりに使ったりする程度のものだ。  コンッと壁を叩き、牽制するかのように相手を見るというこの警告方法は、驚いたことに何故か意図したものとは違う、不思議な効果を発揮した。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!