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夜がだいぶ更けてきた頃、台風は収まっていって、代わりにあの、嵐のあと独特の澄み切った星空が現れた。 「葉月。外きれいだぞ、散歩しないか?」 私はいそいそと布団から這い出して、銀の手を握った。 「行こ」 嵐が去ったあとの夜空には、もう月が出ていた。 「見て。月が、銀のブーツと同じ色してる」 夜空には、琥珀色の大きな月が浮かんでいた。 銀は夜空を見上げながら、私に言った。 「生きてるって、夜空が暗いのと同じくらい当たり前のことで、生きてる間はその重要性に気が付かないけど、夜が暗くないと月の明るさは見えないし、それと同じように生きていないと幸せは来ないし、大切な人を幸せにすることもできない。 だから、生きてる間は精一杯幸せに生きたいと思う。俺が生きている限り、俺は葉月を幸せにする。今夜の月に誓うよ」 「詩人だね、銀」 冷やかしたが、私は何度も何度も銀の言葉を噛み締めた。 きっと私は、一生今日のこの言葉を忘れないだろうと思った。
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