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私たちは幸せな気分のまま銀の家に戻って、彼の得意料理であり、唯一作れる料理のオムライスを食べた。
私は食事中、何度も銀にあの琥珀のブーツが欲しいとせがんだ。
それは銀と付き合いだしてからの私の口癖のようなものだった。
銀はそのたびに律儀に断り続けていた。
私も、一種のゲーム感覚で、何度断られても懲りずにせがみ続けた。
「銀は足が小さいし、私は足が大きいから、絶対に合うよ、ね?」
「絶っ対にやんない」
銀は楽しそうにそう言うと、私の両頬をビロビロとつまんだ。
「いはひぃ」
頬を赤くして抗議する私に、銀は、お仕置きだぁ、と言ってゲラゲラと笑った。
だけど、ゲラゲラと笑う銀を目の前に見ながら、私は何故か哀しかった。
まるで、哀しい夢を見て泣きながら目覚めた時のように、胸が詰まった。
そしてそれは、どこか哀しい予感に似ていた。
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