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夜になって、私がまた寂しくなってきた頃、銀は静かに話しだした。 「俺が考古学に興味を持ったのは、」 銀と考古学の話をするのは初めてだった。 考古学の講義で出会ったというのに、私はそれまで、銀がどうして考古学に興味を持ったのかも、将来なにになりたいのかも知らなかったのだ。 「俺が考古学に興味を持ったのは、爺ちゃんの影響だったんだ。 前にも少し話したかと思うけど、俺の爺ちゃんは考古学の世界では結構名の知られた人で、俺にも色々なことを教えてくれた。 両親が死んで、まだここへ来たばかりの頃、泣いてばかりいた俺に、爺ちゃんは琥珀の話をしてくれたんだ。 葉月は、琥珀が何か知ってる? あれは、『時の結晶』なんだよ。 太古の樹液が、何万年もかかって土の中で『時』を吸収して、目覚めたものが琥珀なんだ。 あの澄み切った塊は、『時』が凝縮されて出来たものなんだって、爺ちゃんは言った。 今、俺達が生きているこの『時』も、思い出も消えたりなんてしない。何万年もすれば、凝縮されて琥珀として姿を変えるんだって教えられた。 そして、その『時の結晶』に秘められているものを探っていくのが爺ちゃんの仕事だった。 その話を聞いたときに、俺は考古学をやりたいって思った。爺ちゃんみたいになろうって思ったんだ。それが、きっかけ」 銀は言った。 琥珀の中には時々、眠ってしまっている間に閉じ込められてしまった生物が入っていたりするんだ。 琥珀に閉じ込められてしまった、生物。 銀は無邪気に笑っていた。
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