第1巻 Another Predator 1話 僕の名前はシュニッティック

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第1巻 Another Predator 1話 僕の名前はシュニッティック

 いつも朝起きるとここを歩きたくなる。何もないからか、それとも何かを流れ着くのを待っているのか。自分でもわからない。  この砂浜は不思議な地形をしている。U字型の大きな岩に囲まれて空を飛んで上から見ないとここにこうやって砂浜があることさえ確認できない。  それにこの中に入るには岩を登る以外に方法が無い。なにせ岩が炭鉱で採れるはずの魔散石で風と火の応用である飛行魔術を使用とすると即座に魔力を吸い取られて魔力不足の症状が出る。  では岩の効果の届かない遥か上空から降りればどうかと言われると狙ったかのように待ち構えている雷雲に捕まってしまう。しかもその雷雲は雷ぐまと呼ばれる2PAC( Paranormal Parasite And Creature:超常寄生生物)の一種で、たとえ雷雲が来ない高さを飛行したとしてもにゅーと自身の雲を伸ばして引きずり込んでしまうらしい。  運が無いことにその熊さんの主食が小さな雲で好物が魔力を持つ人というのだから度し難いにもほどがある。つまりこの上空から一切動かずに餌を手に入れられる。  それに加えて姿を晴れている空に化けることが最近できるようになったみたいだ。一昨日まであった人食いの雨雲が消えた!!と村で大騒ぎになったからだ。あの時は大騒ぎになってうるさかった、ちょっと目を凝らせばすぐそこにいるのにどうしてそこまで騒ぐのだろうか。ものぐさな奴がわざわざ楽な環境を捨ててまで何処かに行くものか。  (まあそう言う私もそうかな)  ゴロンと砂浜に寝転がりながら上にいるクマを見てそう思う。アイツも別に何かしたいわけじゃなくてただそこに入れればいいと思っているそんな奴だろうな。欠伸を一つして上体を起こす。  あ、忘れてた。海から侵入する手があった。でも誰だっけ、たしか近所に住んでた漁師が船で行こうとしたことがあったはず。辺りを見回すと一つの大きな岩がもそりと動いた。うん、アイツにやられたんだ。  アイツもまた2PACだ。名前は確かミナミサザナミサミナミガニっていう10回も言えない名前のカニ。驚きなのがカニの部分が足で岩が外殻、さらにその周りについているフジツボのどれか一つが本体というなんというか一番大事な部分を丸出しにしている残念な奴である。  けれど侮れない部分はある。こいつらは私や上にいるクマと違って働き者だということだ。  
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