第1巻 Another Predator 1話 僕の名前はシュニッティック

2/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 理由はこいつらの食生活にある。まず人は食わない、これは私が不用意に近づいてもこいつらは襲い掛かってこなかったことが度々あった。擦り傷を負っても反応しないし、石や砂をかけても微塵もこちらに興味を示さない。フジツボにかけた時はすごく怒ってこの砂浜一帯をお仲間で埋め尽くされたことがあったけれど特に問題という問題は無かった。  でもこいつらには襲うものがある。木や鉄、それに人の歯よりも硬いものだ。言うまでもないが浜辺には恒例のヤシの木みたいなものはない、あるのは空と砂浜と大海原と岩だ。  どうしてそんなものを選ぶのか、それはよくわからない。何日かボゥーと観察してみてわかったのがまず大量の木や鉄を集めて、それを他の仲間と共に囲み、おしくらまんじゅうをするとなんでか中にあったはずの木や鉄が消えている。ここで興味を持つ人間ならどうなっているんだろうと見に行くだろうがものぐさな私はとりあえずそれを『食っている』と捉えている。それでいいと思っているしそれ以上知る気にもなれなかった。  あと人の歯よりも硬いものは大体サメの歯。一週間くらい前かな、これまた暇だったのである朝ここに来た時に3m以上もある巨大なサメが打ち上げられていた。それをよく見るとなんと歯が無いことに気付いた。あの光景は今でも目に浮かぶ、だって丸ごと抜いたというよりも一本一本肉ごと取っていた跡が見えたから今の歳(13歳)じゃない私だったら当分トラウマになるだろうね。それであのカニ共はそれをこう自分たちの足でバンバン砕いてるのさ、しかも朝っぱらから。  不思議なことに音はそこまででもない、さざ波の音にかき消されるぐらいの本当に小さい金属が擦れる音が聞こえるだけ。 でもそれがどんなものか容易に想像がついた。先程のサメの歯を使ってカニは自分の鋏を研いでた、それも兵士が血がこびりついた剣を研ぐのよりも丁寧にゆっくりと、だ。そこで私はこのカニが生き物に完全に興味を持っていないことを察した。回想終わり。  まあそんなこんなでこいつらは『生きるために』働いているのだ。 私とは別格の生物だ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!