第1巻 Another Predator 1話 僕の名前はシュニッティック

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 かく言う私はいったいどんな女なのか、それはもう語るに及ばず、だ。私は立ち上がり一度大きく伸びてそこから深呼吸をする。朝の浜辺の潮風は夏だろうと冬だろうと肌に刺すような冷たい風を叩きつける。それが鼻の中にスゥーと入ってくると眠い私の目もたちまち開き、否応なしに私を覚醒させる。  「んじゃあまあ今日もやることやりますかねぇ」  そう言って私は浜辺を目指し歩を進める。そういえばここにどうやって来たのかをまだ言ってなかった気がする。これもまた単純だ。  「おーい、カニさん。そろそろ帰るから送っておくれー」  私の役職が特殊生物専門調教師というちょっと変わったものなのだ。これでわかっただろうか?  「いーや、ワイにはそんなことこれっぽちもわかりませんね」  と目の前の骨と皮だけの大きなまん丸い目と耳を持った蝙蝠はキーキー言っている。レコードスカルバット、これも2PACである。コイツの特徴はその目と耳にある。土魔術と移動魔術の簡易応用魔術(といわれてるが実体は火と水魔術を組み合わせた光魔術と土魔術の応用)である射影魔術をこの蝙蝠の目を通す形で使用することによってその場所の風景を紙か何かに映し出し、簡易研磨魔術(土と移動魔術の応用、この場合は針で傷つける程度のなので『簡易』がつく)で耳からその時の音を取り出すのだ。非効率極まりないが絵や見分による伝達よりは実際に見てきたものを紙などの手に入る媒体で知りえるのだから得られる情報という観点からするとそれなりに値がつく。  「ええー、わかってよ。どこの馬の糞かもわからないド底辺に分かりやすく話をするわけじゃないんだからさー」  私はこれ以上細かく説明したり解説できる自信がなかった。子どもが少ないこの島には学校なんていうものが存在しないからろくに勉強もしてないし、この仕事は魔力と知識だけでできるほど簡単なものでないから実際にいない相手に対してここをこうしてああすればできるなんて確証の持てない虚言をベラベラと話せるほど私の口は達者ではない。  「知っている人間でもその説明はどうかと思いまっせ。というか本当にあんさん口が悪いな。そんなんだと親御さんも苦労しますでしょ?」  「余計なお世話だ、丸眼鏡。私は君がこの仕事の宣伝したいって言うから仕方なく引き受けてんじゃん。本当ならトイ城にいるガイツゥアンとかがやるべきなんだから」
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