第1巻 Another Predator 1話 僕の名前はシュニッティック

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 「彼は下っ端でっせ?たとえセルン生態調査員の歴史が長くても調教師にもなれない奴が宣伝してみい?箔が出ないし、できたとしても2PACの餌にしかなれない。これだとお株が下がるのと一緒にやれ貴族の娯楽だーなんだと意味の分からない誹謗中傷を食らうのがオチや」  第一にセルン生態調査員は仕事として成り立っていない。入ったとしても命の保証が無いし、2PACという特殊な動物や世界の様々な動物の生態を調べることよりもそこの環境に現れる密猟者との戦闘や厳しい環境での生活の方が多い。これでは新人の育成をすることがほとんど戦闘訓練とサバイバルの二つに絞られ、実際の調査員としての役割をこなせる日は遠い。最初から慣れている人間であればこちらも文句はないが危険な仕事と言う名目上どうしても給料が良い仕事になるため入ってくる新人のほとんどが何処かの村や町の民間人が多い。  「というか宣伝なら『公の紙』以外に前から使ってる刻印符でできるじゃん。どうして今頃になってそんなものでしようなんて思うかな?」  その刻印符による宣伝は魔力をのせた声を水と土魔術で特殊なインクにしてそれを簡易変換呪符に刻印として描きそれを各村や町に配るのだ。そしてそれを聞くのに村の町の広場で市民を集めて使用するのだ。  これの利点は刻印符一枚とインクを作るための魔術(両方とも第十)さえあれば一人でできる為人件費がかなり浮く。けれども毎回市民を集めなければいけない、刻印されている声が小さい、何か言っていることは分かったが何を伝えたいか分からないと問題は多々ある。その為『公の紙』と呼ばれる新聞紙が少し前から普及し始めている。  「『公の紙』舐めたらあかんで。あれの効果は今はまだ薄いがいずれ刻印符よりも強い影響を及ぼすとリーダーが言うくらいだから何ならワイらも先に手を打っとかなきゃソンソンや」  そう言って私の顔にその大きな目を視界の半分が埋まるぐらい近付ける。はぁ……本体もこれぐらい度胸があればいいんだけどな……。  と思っていると耳にキーンと不快な音が聞こえた。耳鳴りだと周りの音がくぐもって聞こえる。そうでないのでこれはリーダーからの高周波による連絡だとわかった。  「なんやて!?」  目の前の蝙蝠は驚いたようにそう叫んだ。  「トイ城にいるガイツゥアンが死んだやと……!?」  これが原因でこのあと私は世界の歯車の中に巻き込まれてゆく。  
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