第1巻 Another Predator 1話 僕の名前はシュニッティック

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   雷ぐまのところを離れてから数日、トイ城にやって来た。正確には『ゲート』と呼ばれるところらしいが大して差はないだろう。  驚いたことに入るのに3時間もかかった。理由は中に入るのに並んでいる人が多かったのと中に入る際にとても厳重な審査があったからだ。  まず何故並んでいたかと言うとトイ城にあった崖?という所が立ち入り禁止になっていて今までのように不法住民や居住者が容易に入れなくなった。けれどもここなら誰でも受け入れてくれる、という噂が各地に広がっていたみたいで今もそうではないかと来た人々がこのように肩透かしを食らってもなお外に並んでいるという状態が続いている。  それでは埒が明かないというのでトイ城の方でも列の整備がここでやっとされ始めたらしいのだが、それでもまだ住民になろうとしている人の数が多いのでトイ城に繋がる橋は落ちるのではと思うほど大量の人で溢れかえっていた。たまに橋から落ちそうになる人が出るほどだ。  そんなことを知らなかった私はこの事実に驚愕した。流石の蝙蝠もこのことまでは知らなかったようで大きい目をさらに大きくしていた。とりあえず並んでみたものの一向に進まないし周りはやれ抜かしただの横入りしただので喧嘩が絶えない。丁度前にいたおじいさんが優しい人で助かった。親切にも整備されて出来ていた住人以外の列を教えてくれたのだ。それを聞いて私はそちらに向かったのだが後ろでそれを見ているおじいさんの顔が何とも言い難い複雑な顔をしていたので私は後でおじいさんに中のものを何か買ってこようと思った。  まあそれはそれとしてさらに問題があった。その列に並んでいたほとんどが馬車に乗った商人たちで全員嫌な顔をして橋の上で待っていた、なにせ隣で喧嘩が横行しているから不機嫌極まりないだろう。中には積荷を漁る輩もいたが流石に商人たちはこれに対するトラップを仕掛けていた、というのもあって喧嘩に加えて四六時中トラップの風やら土魔術で飛んでいる人が目に入るありさまだ。これではまるで死人の出ない戦場に来たみたいで落ち着かない。  そんなこんなで私の番が回ってきた。そこには二人の兵士が居て私が女だとわかると中から別の人を呼んできた。はいは~いと言われて出てきたのは私より少し背が高くてピッシリとスーツを着ていて金髪三つ編みの如何にもディーラーでもやっていそうな女性が出てきたのだ。  
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