第1巻 Another Predator 1話 僕の名前はシュニッティック

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 不意に頭を叩かれた感覚がしてハッとした。目の前で困った顔をしている金髪の女性とむかつく目と耳をしている蝙蝠が見えた。そこから少しづつ情報を整理していき今自分がどういう状況に置かれているかを理解した。  「……ああ、すみません。ちょっと長旅が続いてたもので」  そう言うと女性はあらそうなの!と言って親切にも一番安い宿を教えてくれた。切り替え早くないかと思ったがどうにも人に親切にされると顔がほころんでしまう。隣から何にやけとんねんと声が聞こえたので足の指の骨を軽く一本折ってやった。ギャッ!?と声が聞こえたが無視した。  「ところでガイツゥアンのことなんですけど――」  「それなら私が話そう」  と言って何処から現れたのか男が立っていた。男は明らかにボロボロの布を一枚頭からかぶり、その下から見える服は何日も洗ってなさそうな臭いを醸し出していた。一言で言えばそこら辺にいる乞食と同じ姿をしている。加えて片足が杖のような義足になっていることが見えたからもしかして元崖?の住人ではないだろうかと推察する。  (おい、何かこのおっさん変な感じがするで?)  (いやそんなこと誰だってわかるさ。それよりもこの人……)  「おっとすまないな、こんな格好でもしていないと正直君らみたいな外部の人間を油断させることが出来ないんでね」  その言葉を聞いて懐から小さいチャクラムを取り出す。蝙蝠もすでに足の裏から鉤爪を出していた。周りにいた人間はその様子を見て叫び声を上げて後退する。  「おいおい、周りにいる人は関係ないんだから怖がらせるなよ。それにこちとら丸腰なんだぜ?そんな異形に立ち向かう勇者みたいな顔する必要はないぞ」  男からは驚くほど何も感じない。わざとチャクラムを回転させ始めて男がどう動くかを見極める。けれど男は先程から眉一つ動かさずに移動せずにその場に突っ立ていた。これでは見極めようにも動かない相手から得られる情報はない。  「……そこのおっさん、あんたヤル気あ―――」  蝙蝠が言おうとした瞬間に目の前から男が消えた。それと共に隣にいた蝙蝠も姿が消えて思わず辺りを見渡す。術式は見えなかった、強化魔術みたいな演唱も聞こえなかった。ならば2PACみたいな生物を使って幻影を出したのか?私が試しに周りを歩いている人に向けてチャクラムを投げようとした瞬間、男の手が私の手首をつかんだ。
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