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あの夜、私は彼への想いを止めることはできなかった。
酔いに任せていた部分もあったが、あの言葉を出したのは私自身だ。
「あの夜、綾瀬さんは……」
その先の言葉を出すのは恥ずかしくて私にはできなかった。
自分から言い出すには気が引ける。
「さすがに寝てる女の子には手を出せないな。何もしてないさ」
「そうですか…」
「けど……」
グラスに残っていた飲み物を再びグビっと飲み干すとさっきとは違って真剣な眼差しで私を見つめる。
「本心はあのまま抱きたかった。彩葉ちゃんのこと」
綾瀬さんの口から発せられたその言葉はあまりにも甘くて妖艶で身体の芯が熱くなるものだった。
だけどその言葉は間違いなく彼から零れたもので、それを向けられているのは私だ。
「笑顔で俺の誘いにもついてきてくれるし、期待してた。彩葉ちゃんも俺の事好きなんじゃないかって」
何気ない言葉のひとつだったけど確かに私の耳に響いた、彩葉ちゃんもという言葉。
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