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「桜田君と高原さん、なんか不思議な組み合わせ」 今日はなんだかすごく優しく抱かれたから、終わった後も気を失うまでいかずに、宇賀神の胸の中でうとうとしながら会話をする余裕があった。 「でも、楽しそうだったね…すごいお似合いな感じ…」 すりすりと頬を胸に擦り寄せられ、宇賀神は、優しく抱くのもいいかもな、と思っていた。 そんなふうに甘えてくる川嶋が、鼻の下が伸びるほど可愛い。 もう一度したくなる、そこは堪える必要があるけれども。 しかし、そのひとは。 微睡みながら、とんでもないことを言い出した。 「龍」 「なんだ?」 「僕、龍に愛されるだけで幸せだから」 本当に、どうしたのだろう、この可愛いひとは。 いつも、実はすごくしんどかったのだろうか? 少し優しく抱いただけで、こんなに甘やかで幸せな気持ちにして貰えるなら、もっと早く川嶋の身体の負担に気づいてあげるべきだった。 鼻の下を完全に伸ばしきって、そんなことを考えていた宇賀神は、川嶋が続けた言葉を、だから、一瞬理解できなかった。 「だから、ちゃんと奥さん貰って、家庭を作っても大丈夫だよ?」 「なん、だって……?」 二人の間に流れていた甘やかな空気が、一瞬で凍りつく。 「お前、本気でそんなこと言ってるのか?」 川嶋の顎を掴み、顔を上げさせる。 彼は、宇賀神でさえ感情の読めない、完璧な無表情だった。 「なんで急に、そんなことを言い出した?」 苛立ちを出さないよう、堪えながら宇賀神は訊く。 どんな感情も見逃さないよう、その瞳を見据えて。 「僕たち、もう30になる」 川嶋は、淡々と言った。 「そろそろ、感情だけで行動するのは終わりにしないと」 その宇賀神を惹き付けてやまない綺麗な瞳で、真っ直ぐに彼を見て、その何度貪ったかわからない綺麗な唇から、残酷な言葉を紡ぎ出す。 「お前は、宇賀神会の跡継ぎなんだから…だから、自分がなすべきことをしなよ、龍」 子どもを、作らないと。 それは、僕ではできないことだ。
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