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「そんなこと…」
「ないと思うか?」
勝手な心配だと笑われても、お前を巡って、16も年の離れた実の弟と争うなんてしたくないし、それこそ宇賀神会の分裂になりかねないからな、あいつが産まれたときから、お前には絶対に会わせないと決めていた。
「会わせるのは、あいつに唯一の相手ができたときだ」
その後ならいくらでも会わせてやるから。
「龍は考えすぎだと思うけど」
でも、そこまで言うなら、もう何も言わない。
そもそも。
「僕には龍がいればそれでいいから」
だから、龍が会わせたくないというなら、会わなくていい。
「俺の跡は、弟に譲る。だから、お前は何も余計な心配しないで俺に愛されてろ」
宇賀神の優しい囁きを聞きながら、川嶋はゆっくり瞼を閉じた。
自分はすごく、甘やかされすぎている。
いつか罰があたるかもしれない。
でも、その罰すら、そのひとは全て薙ぎ払ってしまうのかもしれない。
川嶋の全てと言ってもいい、そのひとは。
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