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シャワーを浴びる川嶋は、せつない声が漏れそうになるのをこらえながら、自分でそこに指を入れ、中に何度も吐き出された宇賀神の欲望を掻き出す。
そして、その空しい行為をしていると、少しだけ暗い方向に気持ちが向いてしまう。
宇賀神は川嶋の身体を初めて抱いた中学3年の冬以前は、勉強と称して様々な女性と関係を持ったようだったけれども。
彼を抱いてからは、他の人とは一切身体の関係を持っていないはずだ。
お前にはこんなに何度もイケるのに、どういうわけかお前以外には全然勃たなくなった、と笑いながら言っていたことがある。
でも。
川嶋は、最近よく思うのだ。
宇賀神は、宇賀神会の跡目だ。
いずれ、父の跡を継ぐ。
それは、つまり。
同じように彼の血を引く子どもに、その先の未来を託さなければならないということではないのだろうか。
こんなふうに次世代への遺伝子を掻き出すのではなく、全て呑み込んで命を宿すことのできるひとに、いつか、彼を渡さなくてはいけないのではないか。
そのことが、川嶋を酷くせつなくさせていた。
宇賀神には、絶対に知られたくなかったけれども。
だから、この、空しい行為は独りでしたかった。
涙が零れそうになるところを、彼の感情に鋭敏に反応する宇賀神に見せるわけにはいかないから。
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