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休日の前だからって、昨夜、激しくし過ぎただろうか?
朝食を食べながら、宇賀神はどことなく元気のない川嶋に、少々反省していた。
彼らも、もうじき30になろうというのだ。
抱くほうの自分はともかく、抱かれるほうの川嶋は、年齢が上がれば身体がキツくなってくるのかもしれない。
そのひとは、夜は、どんな欲望を押しつけても受け入れて、感じて、乱れてくれるから。
ついついそれに甘えて、調子に乗り過ぎてしまう。
「アキ」
名前を呼ぶと、いつもの無表情が少しだけ和らぐ。
彼が呼んだときにだけ、そんな可愛い反応を見せるから、堪らなく愛しい。
そのひとを、もっと喜ばせたい。
「今日、お前が見たがってたものを見せてやる」
「見たがってたもの?」
「高原の子犬だ…今日、道場のほうに連れて来てるはずだ」
そう言ったら、川嶋は、宇賀神が見たかった顔を見せてくれた。
小さく笑みを零す、その顔。
しかし、宇賀神には少し後ろめたい気持ちもある。
本物の子犬じゃないけど、とりあえず喜んでるし、いいよな?
やっぱり駄目か?
真実を知ったら怒るだろうか…?
それにしても、子犬一匹でこんなに喜ぶなら、買ってやるのもいいかもしれない。
自分によりも夢中になられたら癪だから、絶対に飼わせたくないと思っていたけれども。
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