volume1

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「お待たせしたかな?」 第一声の言葉は物腰の柔らかい物だった。 「いえ、少し早く着いてしまって。難波(なんば)出版の朝比奈鈴(あさひなりん)です。今日はよろしくお願いします」 私は彼に名刺を渡し頭を下げた。 「今日はよろしくね。朝比奈さん」 彼が差し出した右手を握ると、私の右手の甲にキスを落とす。 入社してから3年。 ずっと音楽関係の雑誌を担当していたお陰で、海外の方と接することが多い。 何を言いたいかと言うと、この程度で顔を赤らめるほどの可愛さは、今の私にはないと言うこと。
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