第三章

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化学療法が始まって、熱が出てしんどいというラインメッセージ。 見舞い行っていい? ちょっと無理。 そんなやりとりが続いた。 返信が来なくなった。 既読がついていた間は、それでも待っていた。 既読がつかなくなって俺は病院に行った。 『ごめんなさい。今は無理なの』 大翔のお母さんが俺を見て泣きながら言う。 普通は大丈夫。 でも可能性としてゼロじゃない。 薬で白血球が下がり過ぎ、免疫機能が落ちて何かの感染症に、その菌が全身に回って敗血症。 説明されても理解出来なかった。 面会は家族だけって、俺は婚約者なのに。 そう叫びたかった。 お母さんに俺の連絡先を教えた。 それからのことは、辛すぎてあまり覚えていない。 それからまた何日か後の未明の電話、もう意識もなかった。 葬式、大学の友達はみんな号泣していたが、俺は泣けなかった。 現実感がなくて、夢の中で浮遊しているような感覚。 泣いたのは何日も過ぎた後、あらためて大翔のお母さんから電話を貰った時。 『先に言えなかったけど、大翔が貴方の写真を持っててね。とても大事そうにしてたから、棺に入れて大翔に持たせたの。承諾もなしにごめんなさいね』 やっぱり大翔は俺の写真を剥がして持っていたのだと知る。 『ねえ諒太君』 『はい』 『大翔は貴方が好きだったんでしょうね』 『俺も好きです』 『ううん、友達じゃなく…いえ、なんでもないの、今までありがとう』 『俺も、俺も友達としてじゃなく好きです』 お母さんはもう一度ありがとうと言って電話は切れた。 スマホを握りしめ、俺は大翔を失って初めて泣いた。人はこんなに涙が出るのかという程に、泣いた。
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