第二章

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数日後、見舞いに行くと、病室に入る前に大翔の母親に呼び止められた。 病院内の喫茶店で母親と向き合う。 「ごめんね、いつもありがとう」 「いえ、俺が来たいから来てるだけなんで」 「今日は諒太君にお願いがあって、こんなこと大学生のあなたに言うのは申し訳ない話しなんだけど」 「はあ」 「あの子に、大翔に精子凍結を勧めて欲しいの。実は化学療法すると、その副作用でね」 言いにくそうに話し始めた母親を止める。 「ああ、大翔からその話は聞いています」 「じゃあ、あの子がする気がないことも知ってるのね」 「まあ、今はまだ考えられないみたいなことは、言ってました」 「そこなの。必要になるのは将来の話しだけど、今しておかなくちゃならないの。それなのに大翔は病気じゃなくても結婚や子供を持つことはないって言うのよ。なのに費用が勿体ないって。私はあの子が将来を諦めてるんじゃないかと、それが心配で」 泣き始めた母親に、とにかく説得してみますと答えた。 「お願いします。あの子にクリアファイルを買ってきてって頼まれててね。ついでにお昼も食べてくるからって言ってあるの。私はしばらく戻らないから、その間に説得して」
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