See you again

プロローグ

「最後はここだな…」

林田諒太(はやしだりょうた)はクローゼットの前で段ボールの底にガムテープを貼った。

数年間過ごしたワンルームマンションから明日引っ越す。
男の一人暮らし、そんなに大したモノは無いから梱包は自分で行うタイプの引っ越しだ。

今日は前もって業者に渡されていた段ボールに、朝から荷物を詰めている。

あらかた片付き、このクローゼットの中が最後。
諒太は扉に手をかける。

コートやジャンパー、ジャケットなど、金属パイプに掛けていた服をハンガーごと、段ボールに詰めていく。

下にはよくある引き出し型の収納三段チェストを二つ並べて置いていた。これはこのまま持っていくので、運ぶ最中に引き出しが飛び出さないよう角にガムテープを貼る。

上の引き出しから順にガムテープを貼り、左の一番下まできた。
下着や靴下、その他諸々の小物が入っている他の引き出しと違い、中には紙袋が一つだけ。

見たくなくて、でも捨てる事も出来なくて、紙袋に入れてずっと持っていた。

どこのコンビニでも置いてある、チープな作りの一冊のエロ本を、あの時からずっと。