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君が伝えたかったこと
光がいなくなって、一年近く過ぎた。僕は高校一年になって、3組とも別れた。あの後、隼人と梨々香は付き合うことになったらしい。隼人の友達にあとから聞いた。
今のクラスは静か。3組と正反対で少し居心地が悪かった。けど、友達ができた頃には、慣れていた。
今日はお母さん誕生日だ。手紙を書かなくちゃいけない。ごめんなさいって謝らなくちゃいけない。
手紙を書き終わり、リビングに行くとお父さんがいた。お母さんの写真の前に座っている。邪魔しちゃいけない。そう思ってすぐ、自分の部屋に戻ろうとした
「待ちなさい。」お父さんの声にビクッとする。「ここに来なさい。」何を言われるのか、怖くなった。だけど、お父さんに言われたことだ。自分の部屋に駆け込む訳にはいかない。ゆっくり歩いて、おそるおそる、お父さんの隣に座った。
「そろそろ、お前に母さんの話をしなきゃな。」
そんな言葉に、もう一度ビクッとした。
「お前の母さんはな、白内障という目が白くなる病気を持っていたんだ。」
『はじめまして、小泉 光です。』白い目.....。
「手術すればなおるのに、彼女の親は許さなかった。」
「どうして...?」
「本当の親じゃないからだ。本当の親は、震災で亡くなったんだ。」
『お母さんとお父さんはね、私を守るために亡くなったの。』光.....そうだ!光だ!どうして忘れてたんだろう?
「そのせいで、彼女はいじめにあっていた。だけど、諦めなかった。両親の助けてくれた、命は捨てないって。」
『だって、お母さんとお父さんが守ってくれた命だもん。頑張ってお母さんとお父さんの分まで生きなきゃって思った』光は努力家だった。
「でも、母さんには困ったことがあって、勉強が全くできなくて」お父さんは楽しそうに話していた。
そうだ、光も勉強が苦手だったな。光は.....。
「お父さん.....。お母さんの名前って?」
お父さんは楽しそうに、「渡辺 光だ。」と言った。
「小泉じゃなくて?」
「それは、父さんの名前だ。母さんの名字をつかっているんだ。ずっとこの家族の一員だということをわからせるために。」
「そっか」
「お前もずっと、くよくよしてちゃダメだぞ!」
お父さんが言った。
「母さんに怒られるぞ!怒ると怖いぞ。」
『静かに僕を睨んだ。怖かった』そういえば、そんなこともあったな。確かに怖かった。
僕はクスクスと笑いはじめた。
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