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姉である江利奈にこんなにもハッキリと嘘を吐くのは、初めてかも知れない。と遼太は思う。
覚えている限りは、幼い頃から今の今まで一度もなかった。
嫉妬と心配とに駆り立てられ、弟を使ってまでして繋ぎ止めたいと願っている夫を、その弟に心ごと奪われているとは夢にも思わない姉に。
遼太はスマートフォンを持つ手とは反対の、右手の人差し指で唇をなぞった。
さっきしたばかりの古河とのではなく、梶谷とのキスが蘇ってくる。
姉が唯一禁じたことの味わいはただただ甘い、文字通り甘露だった。
思い出すだけでウットリとしてくる。
一方的に話し続ける姉の声に言葉に、梶谷のささやきの幻が覆い被さった。
「愛してるよ。遼太」
あの夜は、江利奈と話しながら梶谷に触られていた。
その記憶を遼太は自分で、体の上で再現し始めた。
下肢の欲望はとっくに上を向き、既にローションを零したかの様に先走りを溢れさせている。
「え?やだなぁ。ダイジョウブだよ。姉ちゃん。ゼッタイ、本気になんかならないよ・・・」
おれは、ね。と遼太は荒くなる息と一緒に、その言葉を押さえ込んだ。
遼太の右手は勝手に強く速く、自身のを刺激していく。
「今、落とし中の男性がいるんだ。うん、スゴイ優しい人。しかも、お金持ちなんだ」
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