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「おまえが働いてるところ、一度見てみたい。サービスしろよなんてケチなこと言わないからさ。逆に色つけてやるよ」
梶谷としては自分の申し出に、遼太は一も二もなく食い付いてくると踏んでいたのだが、
「ダ、ダメっっ!絶対にダメ!」
と、突っぱねられた。
自分でも自分の言葉の勢いにビックリしたように、遼太が慌てて続ける。
「その・・・航介さんが来ると気になって仕方がなくて、多分仕事にならないと思うから。ダメ、だよ」
「遼太・・・」
手にしていたレンゲを置き、俯く遼太の耳が赤い。
梶谷はそっとテーブル越しに手を伸ばし、触れた。
肉がほとんど付いていなくて硬く、そして熱かった。
「まぁ、おれとしてもムラムラしておまえのこと、トイレに引っ張り込みたくなっても困るからな。判った。止めとくよ」
「航介さん」
梶谷が手を退けた拍子に、遼太が顔を上げた。
目が合った途端に鼓動が跳ね上がるのを、梶谷は感じた。下
半身へと直結する様な衝動的なものではなく、もっとジワリとした、胸に染み込む様な感じだった。
遼太が視線を逸らし、不意に立ち上がった。
「そろそろ帰らないと。明日の講義、早いんだ」
「あ、あぁ・・・」
梶谷の皿がもう既に空なのに気が付き、自分のを下げるついでにキッチンへと持って行く。
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