1.ここ二か月の間の、何時もの週末

17/20
前へ
/49ページ
次へ
 「おまえが働いてるところ、一度見てみたい。サービスしろよなんてケチなこと言わないからさ。逆に色つけてやるよ」  梶谷としては自分の申し出に、遼太は一も二もなく食い付いてくると踏んでいたのだが、 「ダ、ダメっっ!絶対にダメ!」 と、突っぱねられた。  自分でも自分の言葉の勢いにビックリしたように、遼太が慌てて続ける。 「その・・・航介さんが来ると気になって仕方がなくて、多分仕事にならないと思うから。ダメ、だよ」 「遼太・・・」  手にしていたレンゲを置き、俯く遼太の耳が赤い。 梶谷はそっとテーブル越しに手を伸ばし、触れた。  肉がほとんど付いていなくて硬く、そして熱かった。 「まぁ、おれとしてもムラムラしておまえのこと、トイレに引っ張り込みたくなっても困るからな。判った。止めとくよ」 「航介さん」  梶谷が手を退けた拍子に、遼太が顔を上げた。 目が合った途端に鼓動が跳ね上がるのを、梶谷は感じた。下  半身へと直結する様な衝動的なものではなく、もっとジワリとした、胸に染み込む様な感じだった。  遼太が視線を逸らし、不意に立ち上がった。 「そろそろ帰らないと。明日の講義、早いんだ」 「あ、あぁ・・・」  梶谷の皿がもう既に空なのに気が付き、自分のを下げるついでにキッチンへと持って行く。     
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加