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早速、食器類を洗い始める遼太の背中へと、梶谷は話し掛けずにはいられなかった。
「後でやっておくからいいよ。早く帰れよ」
「すぐに終わるから。でも、ありがとう」
振り返り答える遼太のはにかんだ顔を見て、梶谷は再び鼓動が高鳴るのを覚えた。
今更、どうしたというのだろうか?
遼太に皿を洗ってもらうなんて、けして初めてのことではない。
何時もそれ以上のことをしてもらって又、平気でさせてもいるというのに。
手早く後片付けを終えた遼太は、何時もの週末と同じ様に身支度を整えて、梶谷の部屋から帰って行く。
泊まっていくのは決まって、土曜日の夜だけだった。
「水曜日に来れたら、又来るから。もし、都合が悪かったら連絡して」
水曜日は遼太のバイト先の定休日だった。
遼太はシフトを週四で入れていたが、確実に体が空く水曜日は必ず、梶谷の部屋へとやって来た。梶谷の都合がよければ。
単身赴任をしたばかりで、知り合いもいない梶谷の付き合いなどないも同然だったが、こうやって遼太が念を押していくのも、ここ二か月間の何時ものことだった。
「あぁ」
「ゴミ、帰るついでに出しておく」
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