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月曜日はこの地域の空き缶とビンとの収集日だった。
遼太が通って来るようになってからは梶谷は、たった一週間でもそれなりに溜まる缶・瓶ゴミを自分で出したことはない。
梶谷はそれらが入った袋を遼太へと手渡す前に思い付いて、テーブルの上に置いてあった財布を取り上げた。
一万札を一枚だけ、抜き出す。
「航介さん?」
「相場よりもだいぶ安いけどな。まぁ、バイト代みたいなもんだ。取っとけよ」
「そんなの、いらないよ。もらえないよ」
「いいからいいから」
半ば無理矢理に梶谷は遼太の、ゴミ袋を握っていない方の手に札を握らせる。
ただでさえよれていたそれは更にしわくちゃになったが、梶谷は全く構わなかった。
遼太はあきらめた様に、おずおずと一万円札を握りしめた。
「・・・ありがとう。航介さん」
小声で済まなそうに礼を言う遼太の手を、梶谷は一度だけ力強く握り、放した。
遼太に小遣いを、金を渡したのは、この二か月の間で初めてのことだった。
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