1.ここ二か月の間の、何時もの週末

19/20
前へ
/49ページ
次へ
 月曜日はこの地域の空き缶とビンとの収集日だった。 遼太が通って来るようになってからは梶谷は、たった一週間でもそれなりに溜まる缶・瓶ゴミを自分で出したことはない。  梶谷はそれらが入った袋を遼太へと手渡す前に思い付いて、テーブルの上に置いてあった財布を取り上げた。 一万札を一枚だけ、抜き出す。 「航介さん?」 「相場よりもだいぶ安いけどな。まぁ、バイト代みたいなもんだ。取っとけよ」 「そんなの、いらないよ。もらえないよ」 「いいからいいから」  半ば無理矢理に梶谷は遼太の、ゴミ袋を握っていない方の手に札を握らせる。  ただでさえよれていたそれは更にしわくちゃになったが、梶谷は全く構わなかった。  遼太はあきらめた様に、おずおずと一万円札を握りしめた。 「・・・ありがとう。航介さん」  小声で済まなそうに礼を言う遼太の手を、梶谷は一度だけ力強く握り、放した。  遼太に小遣いを、金を渡したのは、この二か月の間で初めてのことだった。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加