1.ここ二か月の間の、何時もの週末

20/20
前へ
/49ページ
次へ
 梶谷の部屋が在る地域では、可燃ゴミとプラスチックゴミとは異なり、缶・瓶ゴミは前夜から出してもいいことになっている。  それ故に換金目的で、独自で先に回収する者が後を絶たなかった。 もちろん違法行為だった。  遼太が集積所へと行くと、先客がいた。専用コンテナーへと空き缶を捨てるのではなく、折り畳み式のそれから拾い上げていた。 遼太の姿に気が付くと、逃げはしないまでも、その動きを止めた。  そう若くもない男だった。 年格好は全く違うというのに、遼太はとっさに梶谷を思い出した。 目の辺りがそっくりだと思った。 いやらしくて、卑しい目。  軽犯罪とはいえ、目撃者をどうしたものかと遼太の出方を窺い、動きを止めている男に向かって、遼太は缶と瓶とが詰まったゴミ袋を突き出した。 「やるよ。足しにしろよ。それとこれも」  ジーンズの尻ポケットからしわくちゃの一万円札も取り出し、袋の中へとねじ込む。  呆然とし、言葉も出ない男に遼太は構わず続けた。 「そんな端た金、いらねぇよ。くれてやるよ」  何時までも応えない男に苛立った遼太は、缶と瓶と、そして一万円札とが一緒くたになったゴミ袋をコンテナーの中へと叩き付けて、集積所を後にした 。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加