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2 禁じられたキス
コタツの中で仰向けに寝転がり、梶谷は目を閉じた。
何時も、遼太が帰った後だったら食欲と性欲とが満たされて、後に残るは睡眠欲とばかりと眠たくなるのだが、今夜は違う。
何故だか、目が冴える。
目蓋の裏に、遼太の笑顔がこびりついているような気がする。
梶谷が知る限りでは、遼太は心の底から思いっ切り、笑ったことはないように思われた。
少なくとも、自分の前では。
何時も控えめに、何処か寂し気に微笑むに留まっていた。
やはり、実の姉である江利奈を裏切っているという負い目があるのだろうか?と、梶谷は考えた。
江利奈の夫である自分は、ほとんど罪悪感を感じていないというのに。
最初は、単身赴任が解消されるまで。と思っていた。
何よりも、遼太が求めて望んでいることで、自分はただ、それに応じているだけだと、梶谷は高を括っていた。
しかし、このままではいけないのかも知れない・・・
梶谷が二か月目にしてようやく、そう思い始めた時、スマートフォンの振動音が何処からか、した。
起き上がり、テーブルの上を見ると、そこに置いてある梶谷のが発生源ではなかった。
音はキッチンの方でしている。
果たしてそこには、洗濯機の上で振動しているスマートフォンがあった。
遼太のであるのは明らかで、画面には「姉ちゃん」と表示されている。
このままにしておけばその内、留守番電話に切り替わるだろうと放っておいた梶谷だったが、何時まで経ってもそうはならなかった。
又、振動のみだったが、呼び出し音も止まなかった。
別に自分が出ても構わないだろうと踏んだ梶谷は、遼太のスマートフォンを手に取った。
何せ遼太はその姉の江利奈に言われて、自分の所へと通って来ているのだから。
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