2 禁じられたキス

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 妻の、江利奈の声を聞くのは何時以来だったか? 梶谷はとっさに思い出せなかった。  メールやLINEですら、江利奈のつわりがひどくなった最近では交わしていなかった。  でも、遼太とは話せるらしい。血の繋がりというヤツか、と梶谷は思った。 夫とはいえ所詮、自分は赤の他人だ。と改めて感じる。 「もしもし、遼太?何でスグに出ないのよ?今日の報告、遅いじゃない!」  自分にだけではなく、遼太にも全く変わらない高圧的な口調に梶谷は一瞬、言葉に詰まった。  すかさず江利奈の声がやや低く、早口で続ける。 「ねぇ、今日は何回、アノ人とヤッたの?どんな風だった?」 「!?」  反射的に梶谷は通話を切っていた。 その後、掛かり続ける「姉ちゃん」からの電話には一切出ずに、最終的には電源を切った。  全く黙らせた遼太のスマートフォンをテーブルの上に置き、梶谷はその場にへたり込んだ。  インターフォンが鳴った。 その必要をまるで感じなかった梶谷は、確かめもしないで玄関のドアを開けた。  案の定、遼太が立っていた。 「航介さん、ゴメン。寝てた?おれ、スマホ忘れたと思うんだけど・・・・」
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