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梶谷は問う遼太に、無言のままにあごでテーブルを示した。
上がり込み、スマートフォンを取り上げた遼太の背中に向かって、梶谷が話し掛ける。
「江利奈から、電話があった」
振り返った遼太の表情は顔色は、分かりやす過ぎる程あからさまに、変わっていた。
「おれが出たのに、全然気付かなかった。夫の声だっていうのにな。江利奈におれたちのこと、話したのか!?」
梶谷が力任せに遼太の手首を掴んだために、遼太が手にしていたスマートフォンは弾き飛ばされた。
コタツ布団の上に、音もなく落ちる。
「おまえ、一体どういうつもりで!」
「違う!違うんだ!」
問い詰める梶谷の剣幕が凄まじいのも然ることながら、応える遼太もまた必死だった。
梶谷は初めて見る形相で、聞く大声だった。
しかし、それだけでは到底納得が出来ない梶谷は続けた。
「どう違うんだよ?」
手首を掴まれたままの遼太は、せめて視線だけでも梶谷から逃げたいのか、顔を背けた。
そんな遼太を梶谷は許さない。
「遼太、答えろ!」
更に、手首を掴む手の力を強められた遼太は観念したのか、梶谷へと向き直った。
俯きながらだったが、ゆっくりと口を開く。
「・・・前に言ったよね?姉ちゃんに頼まれたって。その通りだよ」
「え?」
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