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「違うよ!キスは、キスだけはしちゃダメだって、姉ちゃんが・・・」
「江利奈が?おれと何をしてもいいんじゃなかったのか?」
そもそも江利奈がいくら妻だからといって、実の弟を唆し夫へと嗾けた挙句に、アレはしてもいいコレはダメと言うのは、梶谷には全く理解が出来ない。
元もと江利奈には極端なところがあるように、梶谷には感じられていた。
妊娠中で精神的に不安定だとしても、これは極端過ぎる。
遼太は今さっき、梶谷が口付けようとした自分の唇をなぞり、言った。
「キスは、本当に好きな人とだけするものだから、ゼッタイにしちゃダメだって。航介さんの唇は、妻である自分だけのものだからって」
「・・・・・・」
江利奈の、妻の意外なロマンチスト振りに梶谷は驚きつつも、確かに言われてみれば遼太とキスをしたことはなかったなと、思った。
それ以上のことを色いろとし過ぎて、全く麻痺してしまっていた。
遼太が言い募ってくる。
「姉ちゃんは本当に、航介さんのことが好きなんだよ!だからっ!」
「江利奈のことはどうでもいい!おまえは江利奈じゃない!江利奈なんかじゃない!・・・おまえはどうなんだ?遼太。おまえはおれと、キスしたくはないのか?」
梶谷に言葉を遮られ封じられて、遼太は俯き、黙った。
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