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そう言って微笑む顔は、御勝の方に良く似ている。
「あなたは、目元が御母君にとても良く似ておられます」
「まあ、そうですか」
高萩の言葉を慰めと捉えたのか、母子で似ていると言われ幸子内親王は嬉しそうに口元を綻ばせた。
感謝の言葉を残し、幸子内親王達が去って行くのを高萩と二人で見送った。
「姫君は今後、どうされるおつもりでしょうか」
「分からぬが・・・・今まで辛い思いをしてきた分、この先は幸せになってくれるといい」
「そうですね」
このことをきっかけに、主上は幸子内親王のことを折々に気にかけ面倒をみた。
間もなくして、主上に仕える近習の一人と夫婦になったと風の便りで知った。
* * * * * * * * * * * * * * * *
日も傾きはじめた頃。
陽明門院への挨拶を終え、高萩が出てきた。
「待たせたな」
「いえ。陽明門院様は」
「泣かれたよ」
心底堪えたように高萩はため息をついた。
高萩の無事な姿を見て安心したのだろう。
我が子同様に愛情をそそいでくれる義母の涙に、高萩は改めて今回の自分の愚かさを痛感したようだ。
「私の命は・・・・私だけのものではないのだな」
「そうですね」
「人は一人ではない。誰かに支えられて生きているものなのだな」
「ええ、そのとおりです」
しみじみと噛みしめるように話す高萩の言葉を静かに聞いた。
今回、高萩を助けるためにたくさんの人が動いた。
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