終章

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支えてもらったことへの感謝。 迷惑と心配をかけたことへの謝罪。 どちらも忘れてはならないことだ。 今回、確かに高萩は深く考えず、感情のままに行動してしまった。 だが、それは若さゆえの過ちでもある。 過ちは人であるかぎりこの先もあるだろう。 間違ったことをしない完璧な者などいない。 大事なのは同じ過ちを繰り返さないこと。 過ちは素直に認め、償う努力をすること。 それを学んでくれればいい。 「たくさんの方々があなたを支え導いてくださっています。そして、あなた自身も誰かの支えとなり導いていますよ」 「そうだろうか」 「あなたは気づいていないかもしれませんが、あなたの存在そのものが誰かの救いになっているのですから」 持ちつ持たれつ。 人との関わりなんてものは、それで成り立っているのではないだろうか。 完璧でなくともいい。 自分に足りないものを互いに補いあい、支えあって生きていければ。 それでいいのではないだろうか。 「そろそろ屋敷に戻りましょうか」 「あぁ、そうだな」 どこかでツグミの鳴き声がした。 高萩が空を見上げる。 種臣(たねおみ)も空を見上げた。 少し肌寒い風がふき、冬が近づいているのを感じた。   ―― 終 ――
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