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(嫌な音色だ・・・・)
種臣が胸に手をあてる。
聞いているだけで全身の毛が逆立つような、このおぞましい感じは何だ?
不快で憎悪を掻き立てるような、この音は。
まるで・・・・
「まるで警告音だな」
耳に手をあて不快そうに泰親が言った。
そうだ、警告音だ。
単調な音。
単調な旋律。
明らかに殿上人が奏でる笛の美しい音色とは異なる。
この音色を聞いていると、頭の中がかき乱され、思考力を奪われるような気がする。
「警告音?いや、普通の音色だけど?」
晴時がおかしなことを言うなと首を傾げた。
その言葉に泰親がハッと目を見張る。
「・・・・これは幻術だ」
この笛の音が普通に聞こえる者と、警告音のように聞こえる者がいる。
警告音に聞こえる者は、この笛を奏でる者ーーーつまり幻術者と波長が合っているということだ。
「どうする?探すか?」
晴時が指示を求めるように種臣を見る。
「そうですね。まずは、音の出どころを確かめましょう」
種臣がそう指示すると、泰親が迷うことなく音のする方向へ歩きはじめる。
他の者もその後を追うようについていく。
ほどなくして、泰親が立ち止まる。
「ここは・・・・梨壺?」
泰親が立ち止まったのは、御所の一角・梨壺だった。
立ち止まって辺りを見渡すが、どこといって変わった様子はない。
あの笛の音はいまだに続いている。
この音がする限り、今どこかで何らかの異変が起こっているかもしれない。
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