14人が本棚に入れています
本棚に追加
「幻術にかかっている者はどれほどいる?」
「現在、幻術にかかっている者は確認できません」
「そんなはずは」
「幻術にかかった者は、全て行方不明となった子どもたちだと思われます」
そう言って高萩は動かなくなった。
高萩の眉間の皺が深くなる。
「失踪者の中に殿上人の身内の者はいないか?」
報告書に目を通しながら高萩が聞いた。
「確認作業中のためなんとも言えませんが、今のところ宮仕えの下級貴族や民間人ばかりです。ですが、失踪者が御所内に集中しているため、狙いは殿上人の誰かとみています」
「至急確認しろ。もし、現時点で失踪者の中に殿上人の身内がいないとしたら、今後も失踪者がでるだろう。狙いが誰かある程度の目星がつけば警護もしやすい」
「承認しました」
種臣が座を下がろうと頭を下げると、高萩の声が呼び止める。
「種臣」
高萩の方を見ると、不安気な表情をしている。
「嫌な予感がする。早く失踪した子らを探しだせ」
高萩には、未来が見えたのかもしれない。
この失踪事件が、別の何かに発展していくと感じたのだとしたら。
高萩の表情を見て、種臣も不安に襲われた。
「承認しました」
そして、この時の高萩の不安は、数日後に現実となる。
* * * * * * * * * * * * * * *
「種臣殿。確認作業は終わったぞ」
その日の夕刻、報告書を携えた伸基がやってきた。
種臣はすぐさま報告書に目を通すと、ある一点で目をとめた。
最初のコメントを投稿しよう!