あの日の出来事

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「なぜに将棋なのかしらね?」 「それは……」  中三の、あの日の朝のことを思い返す。私たちはお互い偶然に将棋の本を持ってきていて、それがきっかけで話をしたのだ。 「……中学の時に、ちょっと話したことがあって」  詳しくは語らずにそれだけ言うと、頼子は、 「ほら、そんなちょっと話したことを覚えてるなんて、それってそういうことでしょ」  と勝手に盛り上がっている。 「だから……」  そんなのじゃないんだ。央寺くんには過去にフラれているし、バイト中もそんな雰囲気は微塵も感じない。むしろ、厄介者扱いされているはずだと。  ただ、バイト仲間として、同中出身のよしみもあって、店のために面倒を買ってくれているだけだ。それだけだと、頼子の言葉に少し動揺している自分に言い聞かせる。
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